労働許可証取得前後の給与処理について

日本人がタイで働くためには就労ビザ(Non-Immigrant B Visa)と労働許可証(Work Permit:WP)が必要不可欠です。日本からタイに赴任する際、ビザは在日本タイ大使館/領事館にて3か月分の就労ビザを取得し、タイに入国後切替延長手続きをおこないます。ビザは入国管理局の管轄です。

一方、労働許可証はタイ入国後に申請・取得するもので、管轄は労働局です。この労働許可証をもってしてタイで働くことができ、労働許可証を保有する方は国籍別最低賃金以上の給与を受け取る必要があります。裏を返すと、給与の支給を受けるには労働許可証を取得している必要があるということですが、実態としてはタイに赴任したものの労働許可証の取得に時間がかかってしまい、労働許可証を取得できていないまま初回の給与支給日を迎えてしまうケースも少なからず生じています。

このような場合、会計・税務上はどのように処理すればいいでしょうか?

 

例:

Aさんは9月15日にタイに新規赴任した。

初回給与支給日は9月25日だが、Aさんが労働許可証を取得できたのは10月2日だった。

 

労働許可証は未取得の状態ですが、タイでの生活費のため9月25日に会社から50,000THB支給したとします。この場合、会計上は労働許可書取得前に支給される支出のため給与として処理することができないため仮払金として処理します。仮払金のため社会保険料や源泉税は天引きせず満額を支払います。

借) 仮払金 50,000 / 貸) 預金 50,000

 

10月2日に労働許可証を取得後に、仮払金を給与勘定に振替えます。

10月25日に10月分の給与支給と合わせて振替仕訳を行うと、下記のようになります。(源泉税額は便宜上500THBとしています。)

借) 給与 100,000 / 貸)預金 48,750
              仮払金 50,000
              預かり源泉税 500
              預かり社会保険料 750

9月に仮払金として支給された50,000THBと10月分の給与の50,000THBを合わせた100,000THBが10月度の給与として計上されることになり、10月度の源泉税として500THBを11月15日(紙申告の場合は7日)までに申告・納付します。社会保険料も同様に11月15日までに納付します。

 

あくまでもやむを得ない場合にこのような会計・税務処理をとることになりますが、労働許可証の取得が決算期や暦年を跨いでしまう場合には注意が必要です。

給与相当の仮払金がBS残高に残ったままになってしまうと、計上科目は仮払金ですが本来は給与という性質のため勤務実態に応じた発生主義に基づき経費計上を行うことが必要となり、決算期をまたいで給与を支給した場合、本来は期ズレとなるため損金算入ができなくなってしまいます。

また、個人所得税は暦年で課税計算を行うため、仮払金のまま暦年を跨いでしまうと翌年13カ月分の給与が計上されることとなり、個人所得税を圧迫してしまいます。労働対価に対して受け取る給与という性質のため、本来あるべき姿としては前年の課税年度に計上すべきということになります。

 

赴任後可及的速やかに労働許可証を取得する事が大原則ですが、万が一労働許可証の取得が遅れた場合の実務的な会計・税務処理についてご紹介しました。

 

その他、給与や個人所得税関係については、下記記事をご参照ください。

基礎知識について▶『タイでの個人所得税の基礎知識

税率について▶『タイ税金のすべて~ビジネスを行う際に知っておくべき税金~

課税対象所得について▶『タイの個人所得税~対象となる所得~

控除項目について▶『タイ個人所得税の控除項目