親会社の内部監査対応の際、固定資産台帳の膨大な量に驚く方や、現地駐在者からも消耗品費として落とせる金額が少ないので困ると相談をいただくことがあります。
今回は管理面でも苦労の多い固定資産登録が必要な資産にスポットを当てて解説していきたいと思います。
金額基準が無い
日本と大きく異なる点は金額による基準が無いことです。タイの税法上〇〇THB以下であれば消耗品費として全額損金処理をしても良いといった規定が無く、1年以上使えるものは全て固定資産登録を行い、減価償却費の計上が必要というルールが適用されます。そのため日本では一般的に消耗品費で処理ができてしまうスマートフォンやコンピュータ機器なども、タイでは固定資産登録必要です。
タイの税法上は1THBであっても1年以上使える物は固定資産計上し減価償却を行うことがルールですが、実務上は1,000THBから5,000THB程度の社内基準を設けてそれ以下であれば消耗品費として経費処理していることが一般的です。ただし、税法上金額基準の規定はありませんので、税務調査で否認されるリスクがあることを認識することが必要です。
税務と会計の差
また、税法上金型は5年の定額償却ですが、製品のモデルチェンジなどで実際には3年しか金型を使う事ができない場合などには「税法上は5年」「会計上は3年」などと差が発生するため、税務申告書上で調整が必要となります。このような調整を行う場合は会計上の利益と税務上の利益にズレが発生することになります。また、逆のパターンで本来は10年使用できる機械であっても指示を出さないと税務上の最短償却年数で減価償却費の計上を行ってしまうことが多いため、減価償却費が原価を圧迫してしまうことになります。重要な管理項目であるため、公認会計士監査や税務調査でも現物確認が入ることがあります。
日本と異なり償却資産税の制度が無いタイため固定資産台帳の量が膨大になることに現地スタッフは疑問を持ちませんが、日頃から資産の管理に気を配ることで適切な原価認識を行うことができ、盗難などの被害をいち早く察知することができるというメリットにつながるため、一度自社の固定資産台帳と現物確認を行ってみてはいかがでしょうか。
【税金コラム】