タイVATの仕組みについて以前のコラムでご説明しましたが、タイでビジネスを行なっていく上でよく直面するのがVAT課税点の問題です。VAT課税点とは、VAT課税対象となる一つの取引が発生した時に、取引の中のどの時点でVATが課税されるのかを示す言葉になります。
VATは毎月申告(及び納税)を行なう必要があるため、例えばVAT課税点を誤解して本来今月のVAT申告に含めるべきVAT取引を翌月のVAT申告に含めるなどした場合、将来的に税務調査などで指摘を受け延滞税などが科される税務リスクになります。
そのため、VAT課税点を理解しておくことは不必要な税務リスクを負わないために非常に有効です。
今回は取引の種類別にVAT課税点をご紹介します。
(1)物品の販売
自社が物品をタイ国内で販売した場合、原則として物品の引き渡し時点がVAT課税点になります。
ただし、物品の引き渡しより先に以下のいずれかが行われていた場合には、より早い方がVAT課税点となります。
- 物品の所有権が移転していた場合。
- 物品の対価を受領していた場合。
- タックスインボイスを発行していた場合。
例えば物品の引き渡しは来月に行なう一方で今月中にタックスインボイスを先に発行した場合には、課税点は今月中になるため、今月分のVAT申告に含める必要があります。
また、割賦販売を行なう場合には物品の引き渡し時点ではなく、割賦払いの期日がVAT課税点になります。
(2)サービスの提供
自社がタイ国内でサービスの提供を行なった場合、原則としてその対価の受領時がVAT課税点となります。
ただし、対価の受領より先に以下のいずれかが行われていた場合には、より早い方がVAT課税点となります。
- 顧客によってサービスの使用が行われた場合。
- タックスインボイスを発行していた場合。
ただし実務上、サービスの使用がいつ行われたかを断定するのは難しく、また対価受領前にタックスインボイスを発行することも稀であることから、やはり対価の受領時をVAT課税点とすることが一般的です。
(3)物品の輸入
物品を輸入した際、自社が売り手側ではないにも関わらず、VATを売り手側ではなく自社が申告する必要があります(詳しくはリバースチャージの説明コラムをご覧下さい)。
この場合のVAT課税点は物品の輸入通関時です。もし輸入品が一旦タイの保税区(フリーゾーン)に保管され、保税区からタイに輸入される場合にはあくまで保税区から出た時点をVAT課税点とします。
なお、ここで申告及び納税した仕入VATは最終的に自社の売上VATから控除することが可能であるため、直ちに自社の税負担が増加するわけではありません。
(4)サービスの輸入
自社が海外からのサービスをタイで利用した場合、サービスの輸入と見做されます。サービスの輸入も(3)物品の輸入 同様に、自社がVATを申告する必要があります。
この場合のVAT課税点は自社が同サービスへの対価(またはその一部)を支払った時点です。
なお、サービスが海外で提供され、同サービスの消費もタイ国外で行なわれた場合にはVATの課税対象外となりますが、そのようなケースは稀であると考えられます。
その他、タイの税金に関する情報は下記記事をご参照ください。
タイ税金を網羅的に把握▶『タイ税金のすべて~ビジネスを行う際に知っておくべき税金~』