タイの貸倒損失の損金算入要件

日系企業には見られない文化ですが、タイでは支払い期限を先延ばしすることが経理スタッフの評価につながったり、請求書を送っただけでは支払いをしてもらえないことなどがあります。商慣習の違いによる洗礼を受けることも多く、売掛金の債権回収が見込めないなど不良債権の貸し倒れに関する相談を受けることがあります。

そこで今日はタイにおける貸倒損失の損金算入要件について解説していきます。

貸倒損失を損金算入するための要件は債権の金額ごとに異なります。

2,000,000THB超の債権

  1. 支払い請求がなされ、適切な範囲で債権回収のための諸策がとられ、明確に記録されているが、以下の理由で支払いが行われていない状態であること。
    1. 債務者が死亡したか、または失踪宣告がなされた場合で、かつ、その債務者に支払いに充てる財産が無い状態
    2. 債務者は事業を停止しており、かつ、優先権を有する他の債権者が持つ債権が、債務者の所有する財産より大きい状態
  2. 債務者に対して、すでに民事訴訟を提起したか、または、他の債権者が提起した訴訟において債務の支払請求を行っており、かつ、裁判所によって執行令状が発出され、執行官の最初の報告書に強制執行が行われた旨の記載されているが、債務者には支払いを行うための十分な財産がない状態。
  3. すでに債務者に対して破産手続き開始要求を裁判所に提起したか、または他の債権者もしくは清算人により開始された破産手続きにおいて、すでに債務に対する支払請求が提出されたが、残余財産の分配について債務者と和解が成立し、裁判所がそれを認可する命令を発したか、または債務者の破産宣告がなされ、すでに残余財産の最初の分配がなされたか、あるいは裁判所が訴訟の終了を命じた。

※②または③に基づく外国で行われた提起による貸倒損失の損金算入は、その国の法務当局によって発行された訴訟の証拠書類がなければならず、その証拠書類をタイ外務省の規定に沿ってタイ語への語翻訳証明しなければならない。

2,000,000THB以下の債権

  1. 2,000,000THB超と同様
  2. 債権者が債務者に対して、支払請求にかかる民事訴訟の提起を行い、裁判所がその訴えを認め、訴えを受理したか、または他の債権者がすでに提起した訴訟において、すでに支払請求(資金の配分請求)がなされ、裁判所がそれを受理した場合。
  3. 債務者に対する破産宣告に関する申請が提出され、裁判所がその申請を受理したか、または他の債権者もしくは清算人から債務者に対して開始された破産手続きにおいて、すでに支払請求(財産の分配請求)がなされ、裁判所がそれを受理した場合。

※②または③に基づく外国で行われた提起による貸倒損失の損金算入は、その国の法務当局によって発行された訴訟の証拠書類がなければならず、その証拠書類をタイ外務省の規定に沿ってタイ語への語翻訳証明しなければならない。
この金額範囲の場合、該当年度の期末日から30日以内に貸倒償却の社内承認を行う必要がある。

200,000THB以下の債権

  1. 債権回収のための支払請求等の諸策が適切に行われているが、いまだに支払いが行われていない。 かつ、
  2. 債務者に対して訴訟を提起しても、回収が見込める金額以上の費用がかかることが予想される。

 

事業を行う上で避けたい貸し倒れですが、発生してしまった場合は上記の手続きに則り損金算入処理を行ってください。

上記の適用要件を満たせない場合、税務上は寄付金として認定され損金不算入経費として法人税の課税対象となってしまいます。

 

その他、法人税関係については、下記記事をご参照ください。タイ税金を網羅的に把握▶『タイ税金のすべて~ビジネスを行う際に知っておくべき税金~

法人税の基礎知識▶『タイでの法人税の基礎知識

損金不算入経費▶『タイでの節税対策~費用、損金とは?損金不算入経費削減で節税効果~

申告書の見方▶『タイ法人税確定申告書(PND50)の見方

決算期の注意事項▶『タイ法人の決算期の留意事項