タイの付加価値税(VAT)については以前ご説明した通りですが、VATに限らず還付請求には通常税務調査が伴います。
なお、売上VATを仕入VATが上回った場合、上回った仕入VATの還付請求を行うか翌月以降に持ち越し相殺する事が可能です。
通常、還付請求を行なうと税務調査を受けることになってしまうことが多く、一般的には翌月に持ち越す方法を選択します。
輸出の多い企業だと翌月に持ち越しても売上VATと相殺できる見込みがないため、優良輸出企業や登録輸出企業に登録し、還付申請プロセスを簡易化することが望ましいです。
優良輸出企業と登録輸出企業について解説します。
優良輸出企業と登録輸出企業の要件
優良輸出企業に申請するには、下記の要件を満たす必要があります。
- タイ法人で、VATの登録事業者であること
- 払込資本金が1千万THB以上、もしくは優良輸出者(AEO:Authorized Economic Operator)であること
- 3年以上の事業実績があり、一般企業の場合は申請前12カ月間の輸出売上割合が70%以上、優良輸出者の場合は50%以上であること
- 申請前の直近の会計期間において債務超過でないこと
- 安定性、継続性、信頼性のある事業を営んでおり、土地、建物、工場などの不動産を所有していること
- 納税実績が良好であり、事業に実態に応じた納税を行い、租税回避行為がないこと
- タイ工業連盟、タイ貿易委員会、タイ商工会議所、地方商工会議所といった協会または民間団体(貿易分野)の会員、または工業団地の事業者であり、事業が正常に運営されていると機関が証明すること、財務的信用の欠如や債務超過を示すニュースがないこと
登録輸出企業に申請するには、下記の要件を満たす必要があります。
- タイ法人、パートナーシップまたは個人で、VATの登録事業者であること
- 3年以上の事業実績があり、申請前12カ月間の輸出売上割合が50%以上であること
- 申請前の直近の会計期間において債務超過でないこと
- 安定性、継続性、信頼性のある事業を営んでおり、土地、建物、工場などの不動産を所有していること
- 納税実績が良好であり、事業に実態に応じた納税を行い、租税回避行為がないこと
- タイ工業連盟、タイ貿易委員会、タイ商工会議所、地方商工会議所といった協会または民間団体(貿易分野)の会員、または工業団地の事業者であり、事業が正常に運営されていると機関が証明すること、財務的信用の欠如や債務超過を示すニュースがないこと
遵守しなければならない条件
VATの還付は銀行口座への入金が求められます。
VATの支店登記をしている場合は、VATの申告についてはまとめて一カ所で登録します。
株主総会で承認を受け、歳入法典に規定される手続きを踏んだ監査報告書を併せて申請します。
※申請時には税務調査が実施されます。
恩典
PP30の電子申告 | PP30の紙申告 | |
優良輸出企業 | 還付申請から15日以内で還付 | 還付申請から45日以内で還付 |
登録輸出企業 | 還付申請から30日以内で還付 | 還付申請から60日以内で還付 |
恩典は歳入局から承認を得た月から2年間有効です。
その後更新する際には歳入局からの調査が実施されます。
申請方法
優良輸出企業と登録輸出企業は、優良輸出企業・登録輸出企業申請書(Form SorOr.1)を用いて申請できます。
- 所轄の税務署もしくは歳入局の中央税務部門(Large Tax Office)
- 歳入局ウェブサイトでの提出
海外輸出割合の多い企業で、前述の要件を満たしているのであれば、優良輸出企業・登録輸出企業の申請を検討されてはいかがでしょうか。
その他、付加価値税(VAT)については、下記記事をご参照ください。
基礎知識について▶『タイでのVAT(付加価値税)の基礎知識』
『タイ税金のすべて~ビジネスを行う際に知っておくべき税金~』
罰金について▶『タイの税務申告に関する罰金』
課税点について▶『タイのVAT課税点』