以前の記事でご説明した通り、タイには外国人事業法という法律による外資規制があります。小売り、卸売り業、サービス業全般など、外国資本が50%以上のタイ法人では参入が規制されている事業が多く存在するのですが、一方でタイへの進出を促進するための政策も数多く実施されています。その中でも最も多く利用されているのがタイ投資委員会(Board of Investment、BOI)によるライセンスです。
BOIライセンスを取得すると外資規制の対象となっている事業にも外国資本50%以上の会社として参入できるようになる他、税務恩典なども受けることが出来ます。BOIライセンスには複数の種類があり、どのライセンスを取得するかにより受けられる税務恩典の内容が変わってきます。そのためタイ進出時にどのBOIライセンスを取得するのか、取ろうとしているBOIライセンスにはどのような税務恩典があるのか、よく検討、理解することが大切です。
通常、税務恩典は下記の4種類に分けられます。
- 法人所得税および配当金にかかる税金の税務恩典
- 機械輸入税の免除・減免
- 研究開発用の物品の輸入税の免除
- 輸出向け原材料および必要資材輸入税の免除
以下、特に法人税に関する税務恩典について説明します。
2024年9月現在、BOIライセンスの種類によって最高で13年間にわたり法人税の減免税恩典を受けることが可能です。ただし、全ての種類のBOIライセンスに法人税減免税の恩典がついているわけではないため注意が必要です。
税務恩典を持つ企業であっても恩典を行使するかは各企業の判断となります。法人税に関する税務恩典を利用する場合には、法人税の確定申告を行なう際に税務恩典対象となる「BOI事業」と対象外になる「Non-BOI事業」に分ける必要があり、また会計監査の際にもBOI事業を分けて監査を受けることになります。これらの追加手続きによって発生するコストと比較し、場合によっては税務恩典を行使しないという判断もあり得ます。
税務恩典を行使する場合、決算日から120日以内にBOI事務局に対して監査報告書を提出し、法人税免除を申請する必要があります。その後BOIからの調査、通知を受け決算日から150日以内に国税への申告を行います。
BOI事業の開始時点ですが、会計処理上はBOI事業による初回の収入が得られた日からBOI事業をスタートしたとして会計処理します(実務上は初回の請求書を発行した日)。そのため会計上初回の収入が得られるまではNon-BOIという期間が存在することになります。このルールを誤ると法人所得免除恩典を開始する日がずれてしまことになります。
BOI奨励事業であっても、奨励証書に示された製品やサービスの限度(売上個数や金額等)に定めがある場合、定められた数量を超えて収入を得た場合は法人所得税の免税対象外になってしまいます。そのため、BOI事業であっても免税対象外部分についてはNon-BOI事業としてBOI事業とは明確に区分して会計処理を行う必要があります。恩典の対象となる年間生産量を把握することでプロジェクトの拡大申請を行うなどの措置を取ることができます。