日本企業はリスクマネジメントが苦手?part2 ~FP&Aを導入する~

皆様こんにちは。JGAの坂田です。

前回のコラムでは一般的に日系企業はリスクマネジメントが苦手と言われることが多い理由について、リスクマネジメントと本来あるべきCFOの役割についてお話ししました。経理部長の延長にとどまっているだけでは不十分、というお話でした。

そして、ありがちな組織図から、目指すべき組織図のモデルをお示ししました。

今回のコラムは、この目指すべき組織図にある「FP&A」という概念について少し掘り下げてみます。

FP&A、Financial Planning and Analysisは、直訳の通り「財務企画・分析」をさします。

主な業務は「分析、予測、計画の策定、業績報告といった業務を通じて、経営や事業の意思決定プロセスに貢献する」(日本CFO協会による説明)ことで、日本企業における企画部門と財務部門(主に予算担当)を統合したような内容となります。

特に米国系企業では極めて一般的な機能で、経営の意思決定を行うにあたっての根幹の機能です。長らく日本では導入されていない機能でしたが、最近では日系企業でも取り入れるケースが増えてきているようです。

 

CFOは、内部リスクのみならず外部リスクをも考慮して、財務責任者としての立場から意思決定を行うという重責を担っています。しかし、いくら優秀といえども単独でそのミッションを果たすことはできません。そこでその役割を補佐する部隊としてFP&Aが登場するわけです。CFOの直属部隊として各事業部門に配置することで、財務戦略及び事業戦略と密接に連携した全社的なリスクマネジメントを可能とします。

この重要性を鑑みると、CFOの補佐というよりは、リスクマネジメントの核心といえるかもしれません。

 

担い手としては、管理会計、財務会計、事業戦略のすべてに通じた専門家がFP&Aに携わります。

上図のようなツリー型の組織図だと少し見にくいので、マトリクス型の図に変えてみようと思います。

コーポレート部門のラインとしてCFOの直下に配置されるのと同時に、事業部門のラインでは事業部長の直下にも配置されます。CFOと事業部長の直下で2つの直接的なレポートラインが存在しており、その関係性からもFP&Aの重要性を推し量ることができます。そして上図のなかでは子会社も事業部門のレイヤーとして数えており、海外子会社もこのレイヤーに加わることになります。

 

海外子会社管理におけるリスクマネジメントという観点から、FP&Aがその子会社に配置されることでいくつかのメリットが考えられます。

・海外子会社社長と、日本本社CFOと直接コミュニケーションを行う人材が配置されることで、一貫した事業戦略によるリスクマネジメントと意思決定が可能。(CFO-現地FP&Aライン)

・あくまでリスクマネジメントの最高責任者は海外子会社社長だが、FP&Aが現地で直接コミュニケーションをとることで、リスクマネジメントの機能を高めて、形骸化を防止できる。(海外子会社社長―現地FP&Aライン)

 

本社側では、各事業部門のFP&Aからの情報を吸い上げて、全社的なリスクマネジメントを推進する体制も整備する必要があります。

組織体制としては、以下の実例が見られます。

・リスクマネジメント専門の部署の設置

・特定の役職者からなるリスクマネジメント委員会の設置

・社外取締役から構成される監査委員会(米国ではメジャーな体制です。)
(日本だと、指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社の、監査(等)委員会に相当する機関が実施するイメージです。)

 

なかなか中小規模の会社だとここまでの組織と人材をそろえることは困難と思います。

全てを完璧に整備してからではなく、「はじめの一歩」をできる範囲から、重要なところに絞って踏み出すということが大事というのは、これまでのコラムでもお伝えしてきました。特にこのコラムでのFP&Aというのは大企業でさえ未整備なところです。これを導入せよ、ではなく、この考え方を参考にしていただき、要素を一部取り入れる、という活用の仕方を検討していただけるとよいかと思います。

 

海外子会社管理のコラムはここで一区切りとなります。

次回からのコラムもどうぞお楽しみに!