海外子会社の月次決算モニタリング~海外子会社管理~

皆様こんにちは。JGAの坂田です。

 

海外子会社の不正リスクにどのように対応するかに困っている日系企業は引き続き多く、(質問も多いところなので)今日は不正リスクに対応するための月次決算モニタリングについて、ポイントを絞ってお話しします。

 

【月次決算モニタリングで何をするかのポイント】

我々のような職業専門家が月次決算において確認する方法と、貴社の親会社モニタリングの確認方法を摺合せていくことが不正リスクへの対応としての近道です。

 

【月次決算確認手法】

①推移で確認する

②重点確認項目は元帳を確認する

③各種回転期間を確認する

※いずれもサンプルチェック(全件チェックでは時間が足りない)

 

【月次決算確認のポイント】

①現地に増減要因等のヒアリングをする

②重点確認項目のイレギュラー項目をヒアリングする(フロー確認になることが多い)

③回転期間の増減要因等のヒアリングをする(ストック確認も忘れずに)

※これらの目的を予算統制目的と海外子会社には説明する

 

業務プロセス管理については、現地に一任することが多いと思いますが、数字のヒアリングは必ず日本本社から行うこと(現地に業務と数値の関連性の要因について説明させること)が重要です。つまり、日本本社が海外子会社をしっかりとみていると認識してもらわなければならないということです。もちろん可能であればクラウド会計システムを導入し、リアルタイムでの確認を行うことが理想です。

 

このリアルタイムでのヒアリングを日頃から行っていると、数字の変動要因のパターンに気がつくと思います。

 

【数字の変動パターン】

①外的要因パターン

・経営環境の変化

・原材料価格の変化

・取引関係の変化

・会計方針の変更 など

②内的要因パターン

・新規契約

・クレーム対応

・従業員の退職

・工場(一時)稼働停止

・不正 など

 

つまり、日本本社は、説明内容とFSの数値が連動しているか、原因と結果が整合しているかを確認するのです。連動しない「パターン」であれば、不正の可能性が高くなるので、不明点があれば更に踏み込んでの確認が必要となります。

 

【重点確認項目】

この場合の、踏み込んで確認する項目の集合が、いわゆる「重点確認項目」となります。一般的に不正が多く起こる項目は、「売上」・「原価」・「人件費」・「コンサルティングフィー」などの項目なので、これらいくつかの項目を「重点確認項目」として、多くの日系企業では、現地子会社と日本親会社での合意形成を取っていることでしょう。

 

【フローとストック】

ただし、この「重点確認項目」はPLのフロー項目となることが多く、BSのストック項目の確認漏れが発生していることがあるので注意が必要です。BS項目の確認指標としては、各種資産負債の回転期間でみること(換言すれば、ストックとフローのバランスでみること)が一般的です。

 

【事前確認の重要性】

月次決算を結果報告にしなければ精度はまだまだ上がります。上記で、クラウド会計システムを利用したリアルタイム共有が重要と書きましたが、原因と結果の相関関係によるのであれば、事前の「原因報告」ができるに越したことはありません。

 

「今月はこのような原因が起こったため、このような結果となります。」

 

まずは、上記のヒアリングを徹底した月次決算内容の確認から始めることとなるかと思いますが、最終的な着地点は海外子会社からの事前報告の体制づくりです。能動的な海外子会社の組成、これができれば不正とは縁のない企業になるものと思います。

 

今回は、月次決算モニタリングと不正リスクについて関連付けて書いてみました。いずれにしても海外子会社の不正リスクを排除するためには、日本親会社の適正な関与が必要となります。海外子会社管理におけるリスクマネジメント(特に不正リスク)への対応を少しずつでも開始することが重要です。