BOIとNon-BOIの起算日の違い(BOI、歳入局、関税局)  

タイ投資委員会(BOI:Board of Investment)は、タイ国内投資の振興・促進を目的とした投資優遇措置の付与権限を持つ政府機関であり、国内産業を奨励する活動を行っています。投資企業はBOI認可を取得することで、主に「税制上の恩典」、「事業用の土地所有」、「外国人へのビザや労働許可の便宜」といった恩恵を受けることができます。また、BOI認可を取得することで外国人事業法が定める参入規制対象業種であっても、BOI奨励業種であれば100%外資による進出が可能になります。このためタイではBOIの認可を取得している企業が少なくない一方、さまざまな恩典があることから、社内の担当者や管轄する役所によってBOI奨励事業の定義に関する見解に相違が生まれることがあります。

今回は、BOI事業および非BOI (Non-BOI) 事業の定義や区分の考え方、またそれらの恩典の期間(起算日)を解説していきます。

BOI認可や各種恩典は事業ごとに与えられます。ひとつの法人でBOI事業以外のNon-BOI事業も行う場合、それぞれの事業ごとに管理を行う必要があります。ただし、BOIとNon-BOIの区分については、管轄する役所や受けている恩典ごとに基準が異なります。

 

(1)投資委員会の定めるBOIとNon-BOIの区分

BOI認可を取得し奨励証書を受けた認可事業はBOI事業として、それ以外はNon-BOI事業として区分されます。

一般的にBOIの奨励証書を受領している企業は、一部でNon-BOI事業を行っていたとしても“BOI企業”と呼ばれます。またBOIの奨励証書が有効な間は、免税恩典等の期間が切れた後でもBOI企業という立て付けになります。

 

(2)歳入局の定めるBOIとNon-BOIの区分(法人税の免税恩典のある奨励事業)

歳入局(税法)におけるBOIとNon-BOIの区分は、法人税の免税恩典があるか否かにより決まります。法人税申告書(PND50)において、法人税の免税恩典の対象となるものはBOIと定義し、法人税の免税恩典の対象とならないものはNon-BOIと定義します。そのため、法人税の免税恩典期間が終了したBOI事業は、奨励証書上は有効なBOI事業であっても、税務申告書上はNon-BOI事業という区分になります。

また、BOI事業の計上を始める起算日は、初回の収益計上日と定められており、一般に初回の請求書を発行した日と理解されます。期中や月中で初回の売上が計上された場合、諸経費は売上が計上された日を基準に区分され、初回の売上計上日以降はBOI経費、初回売上計上日の前日まではNon-BOI経費として仕訳処理を行います。

法人税の免税恩典期間が終了した後は、有効なBOI奨励証書を保有していたとしても、歳入局の基準上(=法人税申告書上)はNon-BOI区分になります。

なお、法人税の免税期間中に製品やサービスの売上以外で発生する、BOI事業に直接関連する為替差益や預金利息等については、BOI事業として損益算入できるためBOI区分になります。また、BOI事業の利益から分配される配当についても、源泉税の免除を受けることが可能です。

 

原則、税法上の繰越欠損金は、損失発生事業年度の翌年以降5年間持ち越すことができます。ただし、BOIの法人税免税恩典を保有する場合、免税期間中の単年度の損失合計はBOI免税期間の終了後から5年間、繰越欠損金として利用可能です。

BOI事業を複数保有する企業の場合、事業別、プロジェクト別に収益・費用を集計する必要があり、共通費用は収益額や面積比、従業員人数、稼働時間等、合理的な基準による分配が必要です。

 

(3)関税局の定めるBOIとNon-BOIの区分(原材料等の輸入免税恩典のある奨励事業)

関税局(関税法)におけるBOIとNon-BOIの区分は、最終製品が輸出され、輸入関税の免除恩典を受けることができるかにより決まる。輸入関税の免税恩典はすべての条件下で利用されるわけではなく、マックスストック(最高許可量)内で輸入された原材料等を使用した最終製品が輸出された場合のみ利用できます。そのため、BOI証書上で輸入関税等の免税恩典が付与されていた場合でも、その恩典は利用せずに、自由貿易協定等の活用で輸入関税が免除される場合や、最終製品が輸出されずタイ国内販売となる場合、Non-BOI区分になります。

 

BOIが定める投資優遇制度は、国にとって重要な投資促進施策であるものの、申請から認可取得までにはBOI担当官との詳細にわたる面談等が求められ、また奨励業種の幅が広い分、ルールも複雑です。前述してきた通り、一方の側面ではBOI事業と解釈できても、もう一方の側面ではNon-BOI事業と解釈できるケースが存在することもあって、日本人責任者が交代する際に認識のズレが発生することは珍しくなく、営業担当者、経理担当者、BOI担当者でそれぞれの解釈が異なる場合もあります。

正しいルールを認識しなければ法令に抵触する可能性もあるため、社内において適切な情報共有を行うことで、さまざまなリスクの軽減につながります。

 

その他BOIに関する情報は、下記記事をご参照ください。

ライセンスの種類について ▶ 『BOI(タイ投資委員会)ライセンスの種類

税務恩典について ▶ 『BOI(タイ投資委員会)における税務恩典