タイ駐在員事務所の設立

以前のコラムで駐在員事務所の概要、及びメリットデメリットを説明しましたが、今回は実際に駐在員事務所を設立する場合の手続きについてご説明します。

 

 

1. 駐在員事務所の概要決定

まずはどのような活動を行なうためにタイに駐在員事務所を設立するのか、人員構成はどうするのかなどの社内方針を決めなくてはなりません。

駐在員事務所にはメリットもある一方で、認められている活動内容には多くの制限があります。そのため、駐在員事務所を設立して間もないにも関わらず想定外の業務が増えてしまい、別に現地法人を設立し直すケースもあります。

そもそも「何故現地法人ではなく駐在員事務所を設立するのか」明確な理由があるのかよく検討することが重要です。

 

2. オフィス住所決定

駐在員事務所設立前に予めオフィスを決定しておく必要があります。

駐在員事務所設立前であるため、駐在員事務所名義でオフィスを借りることは出来ませんが、一般的には日本の本社名義、または社員の代表の方名義でオフィスオーナーと予備契約を結んでおき、駐在員事務所設立後に本契約を結ぶ、または契約主体を変更するなどの対応を行ないます。この予備契約の際にはデポジットの払い込みを求められるケースが一般的です。

駐在員事務所であれば人数が少ないケースが多いため、シェアオフィスなど必要最低限の広さのオフィスにしてコストを抑えることも考えられます。

 

3. 商務省事業開発局(DBD)へ登記申請

申請書類及び必要な添付書類を作成し、所轄のDBDへ申請を行ないます。

これらの書類はほぼ全てタイ語であり、作成に知見も必要であるため、タイにこれから駐在員事務所を設立する企業が独自に準備することはあまり現実的ではないと言えます。

そのため、現地の法律事務所やコンサルティング会社のサポートを受けることが一般的です。

駐在員事務所の場合、一般的には申請が受け付けられてから3週間程度で設立が認められます。

 

4. 銀行口座開設

駐在員事務所名義の銀行口座を開設します。

銀行や開設する銀行側の支店によって対応が異なりますが、口座開設にはかなり時間が掛かることもあります。そのため、タイ進出を計画している段階から銀行側に相談し、必要書類などを出来る限り事前に準備しておくことが重要です。

また、タイで銀行口座を開設する際、ネットバンキング登録も併せて銀行に申請することをお奨め致します。ネットバンキング登録を行なうと銀行の窓口に行かずオンラインで送金などの手続きを行なうことが出来るようになります。

 

5. 活動資金送金

法人口座開設が完了したら株主から資本金を送金します。

駐在員事務所では最低200万THBの活動資金を設立後に本社から受けとる必要があります。

タイ国外からの送金には時間が掛かるケースもあるため、銀行側に事前に確認しておくことをお奨め致します。

 

6. 社会保険(SSO)登録

従業員を雇用するためにはタイの社会保険(SSO)に法人を登録する必要があります。なお、SSOは従業員全員が加入することが義務付けられていますが、駐在員事務所マネジャ(1名)は加入の義務はありません。

社会保険料は従業員の雇用開始以降、毎月申告、納付する必要があります。SSOを登録する際は、SSOのe-Filingも同時に登録することにより、オンラインで申告が可能となります。

 

7. タイ人スタッフ雇用

駐在員事務所において外国人駐在員1名をタイ現地に置くためにはタイ人従業員1名の雇用が必要です。

タイ人スタッフを雇用するためには現地の人材紹介会社を利用する方法が一般的であり、日本語人材を中心に紹介してくれる日系企業向けの人材紹介会社などもあります。

タイでは一般的に退職まで少なくとも1ヵ月前通知が必要とされており、雇用したいタイ人従業員の前職での引継ぎなども勘案すると法人設立前から採用活動を行なっておく方がスムーズです。

日本人1名、タイ人1名のみで活動する駐在員事務所の場合、タイ人スタッフは総務やマーケティングとしての業務を任されるケースが多いため、経理、給与計算などは外部のサービス(会計事務所など)を利用することが多いです。

 

8. 駐在員VISA、WP申請

日本人駐在員を日本本社から出す場合、一般的なVISA、WPの手続きとしては大きく下記2段階の流れになります。

  • 日本のタイ大使館または総領事館でVISA(90日間滞在可能)を申請、取得してタイに入国する。
  • タイのOne Start One Stop Investment Center (OSOS)にてWPを取得します。通常は1年分が発給され、VISAも同時に延長することが出来ます。

なお、現地に信用できるタイ人の方が元からいて外国人駐在員を送り込まないケースも考えられるため、タイ進出を計画する段階でどのような人員配置にするか計画しておくことが大切です。

 

9. 歳入局e-Filing登録

日本と異なり、タイではほぼ毎月源泉税の申告、納税作業が発生します。歳入局のe-Filing登録を行なうとこれらの作業を歳入局窓口ではなくオンラインで行なうことが出来るようになります。

業務効率化のためにも是非e-Filing登録を行なうことをお奨めします。

なお、ほとんどの現地法人はVAT登録を行ない毎月VAT申告も行なう必要がありますが、駐在員事務所の場合VAT登録は不要であり、従って毎月のVAT申告も発生しません。