タイでの会計人材の採用のコツ

はじめに

タイ進出されている日系企業さんからのご相談として会計や税務に関するご相談はもちろんですが、良い経理スタッフをどのように見極めて採用するのかまた、すぐに転職をしてしまうので、安定的に働いてもらうにはなにかコツは無いのか、というご相談を受けます。経理の実務経験が少ない日本人赴任者がタイ現地で経理スタッフを採用する際にどのようなポイントに気を付けると良いのか、また、どのようなかかわり方をする事で離職率を下げる事につながるのかを多くタイ人経理スタッフの採用や育成にも関わってきた立場からタイにおける経理人材採用方法のコツを解説していきます。

 

タイの会計教育と資格制度については、以前コラムで解説しているので、こちらをご参照ください。

 

採用時のチェックポイント/スタッフの安定化

 

【会社スタート時】

経理スタッフという専門的な業務を行っていただく以外にも、総務や庶務的な幅広い業務を行っていただく必要があります。そのため、経理業務の分担化/担当制が出来上がっている、経理部員が多い組織での勤務経験者より、中小企業で幅広い業務の対応経験者や、会社の立ち上げ業務の経験者を採用する事で、業務マニュアルが無いスタート時でも臨機応変に対応可能です。

 

【経理スタッフを1名のみで対応時】

スキルと給与この両面の比較になりますが、スキルが高い方は給与も高額となります。1名体制で経理業務を行う場合、会社全体の経理業務を一人で担っていただく事を考えると、新卒の方や経理業務としての経験が浅いスタッフ、大企業でAP(買掛)、AP(売掛)など特定の業務を中心に行ってきた方だと、税務調査や公認会計士の会計監査対応が行えないなどの問題が発生します。自社で求めるスキルのスタッフの採用が難しい場合は外部の会計事務所を活用するなど社内で不足する業務を外注するなどして企業経理の体制を整える方法もあります。

 

【経理スタッフが複数名で対応時】

日本と異なり経理スタッフの多くはジョブホッピングをして経験を積み給料を上げていくということが一般的です。新しい経験を積みたいとして転職活動をされる方の多くがスキルをあげるための職場環境に満足を得られていないケースが多いため、マネージャー職として採用する方が下のスタッフに対する教育をしっかりとできる環境を作るなど、経理スキル以外にも組織運営スキル等が必要になります。

また、毎月行う必要のある業務が日本と比較しても多いため、経理部など間接部門に従事するスタッフを多く抱える必要があります。このステージになった場合はスキルと給与、また行う業務を明確にする必要があります。

 

【離職率を下げる企業努力】

転職理由がスキルアップ/経験をさらに積みたい。もちろんこの一番の理由はスキルを積んで給与アップを図ることですが、その言葉の後ろ側にある本当の転職理由は、スキルアップや幅広い業務を行いたいが、上席のスタッフが業務を全て行ってしまい自身のスキルが伸びない、またはその逆で、業務量を抑えたいが仕事が多すぎるということが多いです。経理スタッフと言っても「仕訳の入力」「財務分析」「監査対応」など自身の得意とする、またはやっていきたい業務がそれぞれ異なるので、経理業務の中でも適材適所の仕事を割り振る事で離職率を下げることにつながります。

また、CPDサイナーとして法律的な責任を個人として追うが、マネジメント側にタイにおける会計・税務のルールを説明してもなかなか理解してもらえないという、不安要素からの転職理由も多いです。これらの理由を解決していくためには、統括管理をするマネジメントサイドも営業のみではなく、経理スタッフが何を行っているのか、またどういった業務を行っていくのが得意なのかを少しでも把握する事ことで従業員の離職率を下げることに繫がります。

 

 

終わりに

多くの日系企業で管理部の駐在員や責任者を置ける規模は日本人が5~6名以上になった段階です。モノを作り、売るという一番の目的が最優先されるべき立場で赴任する方が多い中で「会社の運営責任者」という立場でもあります。会社全体の管理を行う事にも目を向け会計が苦手という方も少しでも経理スタッフに耳を傾け、どういった業務を行っているのかを知ろうとすると黒字化に向けた強い経理チームを作っていく事は可能です。