タイには国家安全保障や国内産業保護の観点から外国人事業法による外資規制が存在します。
外資規制の観点から、タイの現地法人は下記の通り大きく2種類に分けられます。
- 内資法人:株式の50%超がタイ人によって保有されているタイ法人。
- 外資法人:株式の50%以上がタイ人ではなく外国人によって保有されているタイ法人。
上記のうち、外資規制の対象とされるのは②外資法人になります。
タイに進出する際、自己資本100%で日本から出資を望むケースも多いですが、事業内容によっては外資規制の制限を受けることになります。特にサービス業(卸売業、小売業を含む)はほぼ全ての分野で外資規制対象となってしまうため、下記のような対応を行なうことが一般的です。
1. タイ現地のパートナーと共同出資する方法
自己資本100%ではなく、現地の信用できるタイ人またはタイローカル企業から出資を受け、内資法人として設立する方法です。
一番の正攻法ではありますが、設立後にパートナーと揉めてしまい折角タイに進出したのに事業が進められなくなるケースも非常に多く見られます。
出来る限りそのような問題が起きないようにするための対策としては下記が考えられます。
- 出資に際し必ず専門家が作成したJoint venture契約書をパートナーと締結すること。特にデットロック条項を綿密に作成する。
- パートナーのローカル企業を1社ではなく2社にすることにより、自社が最大株主である状況を維持すること。例えば自社49%、A社26%、B社25%が出資する形態を取る。
- タイ法人設立以外にも長年ビジネスを共に行なってきたパートナーを選ぶこと。そうすることで、タイ法人設立で関係が悪くなると他のビジネスで不利益が相手に発生する状況を作り牽制することが出来る。
2. BOIライセンスを取得する方法
タイ政府は外資からの直接投資増加を目指しタイ投資委員会(BOI)を設置しています。BOIからBOIライセンスの発給を受けることにより、BOIの定める条件を満たす限り外資規制対象の事業を外資法人として行うことが出来ます。
BOIライセンスはいくつもの種類が設定されており、行いたい事業内容に応じてどのBOIライセンスを申請するか選択する必要があります。
BOIライセンスの利点としては法人設立前からBOI担当官にBOIライセンス取得の可能性を相談すること、実際のライセンス申請も法人設立前から可能である点が挙げられます。そのため、BOIライセンス取得が確実になってから法人設立を行なうことが可能です。
他にも、BOIライセンスを保有している企業には税務恩典や、駐在員へのVISA発給に際しBOIが認めれば駐在員1名に対しタイ人従業員4名の雇用義務が発生しないなどのメリットがあります。
BOIの取得に掛かる期間は半年前後が一般的です。
3. DBDからForeign Business License(FBL)を取得する方法
BOIとは別にDBDも外資企業向けに事業許可(FBL)を発行しています。
しかし、申請から承認まで非常に長い時間が掛かることが一般的であり、実際に申請しないと承認されるか不明であること、また現地法人設立以降にしか申請できないことなどから、現実的な方法ではないと言えます。
以上、タイ外国人事業法による外資規制について説明してきました。
この他にもタイ土地法では原則として外国人及び外資法人の土地保有を認めていません。ただし土地法の定める外資法人は「株式の49%超がタイ人ではなく外国人によって保有されているタイ法人」とされており、外国人事業法上の定義と異なる点に注意が必要です。