成熟期の地域統括会社管理方式~海外子会社管理~

皆様こんにちは。JGAの坂田です。

今回も海外子会社管理の方式についてのお話になります。前2回のコラムで、創業期の海外事業部管理方式、成長期の事業部門管理方式を紹介してきました。海外事業も軌道に乗り、海外子会社の数が増えて海外売上高比率が高まってくると、事業部門管理方式では限界が見えてきます。そこで採用されるのが、「地域統括会社管理方式」という方式になります。今回のコラムでは、この方式の概要を見ていきます。

まず、簡単に組織図の形で図示すると、以下のような形です。

日本を代表するグローバル企業で、パッと思いついた企業の名前のグループ構成を見てみると、ほぼ間違いなくこの方式が採用されていることが確認できます。(ホームページを見てみると統括会社や統括拠点といった名称で出てくると思います。)

中堅企業の規模でこの方式をとることは稀ですが、この方式のメリットとデメリットを知っておくことで、部分的に要素を取り入れることは有益かと思います!

 

さて、冒頭に事業部門管理方式では限界が見えてくると書きましたが、その限界とはなんでしょうか。簡単なモデルを考えてみましょう。

とある会社のA事業部では最初東南アジアの子会社だけでしたが、ヨーロッパ、北米、中南米、アフリカにも進出しています。B事業部やC事業部も同じようにいろいろな地域に進出しています。

この状況、人事、財務、経理、情報システム等、地域ごとに共通化できるコーポレート機能を各事業部で持つのは非効率ですね。地域・国ごとに全く異なる法令や習慣に対する対応を一つの事業部で管理するのも大変そうです。

そうならば、特にコーポレート機能にあたる部分は各地域でまとめて効率的に管理しよう―これがこの「地域統括会社管理方式」の狙っているところです。各事業部門でバラバラに管理されていた各海外子会社が、地域統括会社の一つ屋根の下に入ることで、シナジーにより規模の経済(=スケールメリット)が活きることも期待できます。

ただし、無理やり地域でまとめても効率的になるとは限りません。ヨーロッパならばEUとして地域統合が進んでいるので相対的にメリットが生かせそうですが、アジア地域としてタイもベトナムもシンガポールもインドも見る、というのは現実的ではなさそうです。統括する事業範囲、機能の範囲、地理的範囲の見定めが重要で、場合によってはあえて事業部門管理方式にとどめておくことも選択肢となります。

では、地域統括会社管理方式ではどのようなコミュニケーションエラーが問題になるでしょうか。

【コミュニケーションエラーの内容】

レポートラインの複雑化  日本本社 VS 地域統括会社 VS 海外子会社

事業部門管理方式でも「レポートラインの混在」と、似たような文言になっていましたが、問題の本質は共通しています。報告対象が日本本社の事業部門、コーポレート部門、地域統括会社の事業部門、コーポレート部門と、地域統括会社管理方式の場合、報告を要求される部署の数が増加して、海外子会社の負担が増えてしまいます。組織図を見ればわかるように、海外子会社から見ると上の階層に存在する主体の数が増えています。

適時適切な情報共有の仕組みを整えておかないと、せっかく効率化のために統括会社を置いても裏目に出てしまいます。また決裁ラインに入る部署の数が増えるため、意思決定に時間がかかりがちなところもデメリットに挙げられます。

これらのデメリットをできるだけ表出させないよう、日本本社、地域統括会社が適切に協働したり、権限移譲の範囲を広げるなどして、管理コストやコミュニケーションコストの低減を図ることが肝要です。

 

次回のコラムでは、近年のトレンドである「買収会社活用方式」を紹介します。これが海外子会社管理方式の類型の紹介としては最後となり、そのあとはガバナンスの話に移っていきます。引き続きどうぞお楽しみに!