タイで法人を設立した後、多くの日系企業が親会社からのローン借入れをおこなっています。
これは、初年度から利益をあげることは難しいビジネスモデルも多いこと、また、タイ現地の金融機関からのローン借入れは利息が比較的高く、実務上もハードルが高いことが理由です。
また、日本であれば過小資本税制が定められおり資本金に対し一定以上の比率の親子間ローン借入れを行なうと支払利息の一部について損金算入が認められないことになります。しかしタイでは現状このような過小資本税制は定められていないため、税制上は親会社から多額のローン借入れを行なっても不利にならないことが挙げられます。
しかし親子間ローンは親会社と子会社間で取り決めを行うので融通が利きやすい一方、移転価格税制の問題や両国での税務リスクが潜んでいるため、契約内容には注意が必要です。今回は特に重要な論点となる利率の設定に関してアプローチのポイントを解説していきます。
1. ローンの通貨
ローン契約に際し円、バーツ、米ドルなど、どの通貨を採用するか決定し為替リスクをどちらが負担するかの検討を行ないます。バーツで日本から貸し出す合、為替リスクを日本が持つ事になるため、為替ヘッジレートを上乗せするかの検討が必要です。
2. 自己資金か調達資金か
貸手である本社側の資金が手持ち資金か調達資金かにより日本側での税務リスクが異なります。調達資金であれば日本の金融機関等から調達したレートより低い利率でタイに貸し付けてしまうと、日本本社側が寄付金認定を受ける税務リスクがあります。
3. 契約期間に応じた国債レート
親子ローンの契約期間に応じた通貨国の国債レートを基準レートとする方法があります。このレートに前述した2つの要素から上乗せが必要かの判断を行います。
【タイ当地での調達レート】
日本側の税務当局はタイ当地で借入れを行ったと仮定した際、地場の金融機関から調達するレートを用いる事が税務上適正と判断するケースがあるため、採用する予定の利率とタイ金融機関の借入レートに大きく差がある場合は日本の税法上適正判断が取れるかの検討が必要です。この点は日本側の税理士とも協議のうえ適正レートと判断が出来るレンジを決定することがポイントです。
親子間ローンでは、タイ現地法人の費用負担を少しでも減らす目的で市場金利より低い設定をした場合には日本側で寄付金認定を受ける税務リスクが発生し、逆に本社への利益還元を目的とし高い利率を設定した場合、税務上一般に公正妥当な範囲を超えるとしてタイ側で損金否認を受けるリスクが発生します。
移転価格税制の観点からみて適正利率の設定を行う事が必要です。また、タイから日本へ支払う利息には15%の源泉税が発生するため、源泉税の取り扱いなども含めタイ、日本両者にとって税務の視点で不利とならない契約を締結することが重要です。
移転価格での利率の考え方としては、親子ローン利息取引の判例分析をぜひご参照ください。