タイの相続税・贈与税の課税対象取引

タイには以前は相続税や贈与税という制度が無く、所得税のみが課されていましたが、2016年2月1日から相続税・贈与税制度が導入されました。タイ駐在中にコンドミニアムなどの不動産を購入された方や、タイ現地法人の株式を保有する方は、タイで今まで発生しなかった税金の支払いが出る可能性があります。今回は、相続税、贈与税の対象となる取引の範囲について解説していきます。

相続税について

相続人の国籍を問わず相続した場合には、タイの税法である歳入法典に定められる個人所得税は免除されますが、相続税の納税義務者となります。相続税は各被相続人から受け取った相続財産の合計のうち1億バーツを超える部分に対して課税されます。相続を複数回受け取った場合、合算した金額に対して課税されます。税率は親・子孫などの直系尊属・卑俗の場合は5%、それ以外の場合は10%が課されます。配偶者が受け取る相続財産には相続税は課されません。

贈与税について

贈与税については、財産および贈与者別に非課税枠が設定されています。受贈者が親。子孫などの直系尊属・卑俗の場合は一課税年度において、親から子への不動産の譲渡が2,000万バーツ、直系卑属・尊属、配偶者からの道義的な生活費の贈与が2,000万バーツ、もしくはそれ以外の方から受け取る道義的な生活費等は、1,000万バーツまでが非課税枠となり、これを超えた部分に5%税率で課税されます。

課税対象

課税対象となる資産は住宅や土地、銀行預金や株式などの有価証券、車両などが対象です。相続税については、相続から150日以内にPM60という専用の申告書で歳入局に納税申告が必要です。贈与税については、贈与を受けた年の翌年3月31日が納税申告期限です。申告時に適切な財産評価を行う必要があるため、実際に相続をしてから作業を行うと申告期限に間に合わない可能性や、日本側でも相続税が課税される二重課税問題等も考えられます。

 

 

実際にタイ駐在中の日本人に相続が発生した場合、被相続人がタイに財産を保有していると、日本とタイでどのように相続税がかかるかを解説していきます。

前提:相続人および被相続人はともに日本国籍

タイの相続税

日本人がタイの相続税をおさめるケースは2パターンあります。

  1. 相続人が移民法に基づく居住ビザを持ち、タイに住んでいる場合→相続したタイ国内財産と国外財産に相続税が課税
  2. 相続人がタイに住んでいない場合→相続したタイ国内の財産に相続税が課税

日本の相続税

日本人が死亡し相続が発生した場合、被相続人の住所と相続人の住所(及びその期間)に応じて課税範囲が変わってきます(図表参照)。被相続人と相続人が共に10年を超えて日本に住所がない場合、タイの財産について課税されず、日本国内の財産についてのみ課税されます。それ以外のケースでは、日本の財産の他、タイを含む全世界の相続財産に相続税が課されます。

よって、財産を相続した相続人によってはタイと日本の両国で相続税の申告が必要となり、二重課税となる恐れがあります。

 

今回は相続税と贈与税について解説しました。

タイの個人所得税については、下記記事をご参照ください。

基礎知識について▶『タイでの個人所得税の基礎知識

税率について▶『タイ税金のすべて~ビジネスを行う際に知っておくべき税金~

課税対象所得について▶『タイの個人所得税~対象となる所得~

控除項目について▶『タイ個人所得税の控除項目