タイ外資規制の記事でご説明した通り、タイで外資法人(株式の50%以上が外国人により保有されているタイ企業)として外資規制がかかっている事業を行なうためにはいくつかの方法があります。その中でもタイ投資委員会(Board of Investment、BOI)からライセンスを取得することはメジャーな方法のひとつです。
BOIは事業分野別に複数のBOIライセンスを設定しており、ライセンスの種類ごとに許可される事業、恩典の内容、及びライセンス取得の条件が異なります。またライセンスの種類は時折改定されることもあります。今回は例として、比較的よく目にするBOIライセンス3種類の許可事業、取得条件の概要をご紹介します。
【International Business Center, IBC】
IBCはタイ国内外の関連会社へのサービス提供及び国際貿易を行なう目的で設立された外資法人向けのBOIライセンスです。IBCでは下記いずれかの事業を行なうこととされています。
- 一般管理、事業計画立案、ビジネスコーディネーション
- 原材料および部品の調達
- 製品の研究開発
- 技術支援
- マーケティングおよび販売促進
- 人事管理、トレーニング
- 財務に関するアドバイス
- 経済と投資の分析および研究
- ローン管理・コントロール
- 財務センター (Treasury Center) の 財務管理サービス
- 国際貿易事業
- 財務センターの業務範囲外の関連企業への貸付で、為替管理法に基づいて実施可能なもの。例として
・タイ国外にある関連企業への外貨貸付
・タイ国内にある関連企業へのタイバーツ貸付
・ベトナムおよびインドと国境を接している国の関連企業へのタイバーツ貸付。借り入れた企業はタイまらはその国で貿易または投資のみに使用すること。 - 関連会社に対するオフィスもしくは 工場の手配や賃貸
- 委員会が承認したその他の支援 サービス
ただし、⑪国際貿易事業のみを行なうことは認められておらず、必ず関連会社向けのサービスを提供している必要があります。
IBCでは払込資本金が1,000万THB以上必要とされています。
また、関連会社への財務管理サービスのみの場合には知識および技能を有する正規従業員を5名以上、それ以外のIBC事業も行う場合には必要な知識及び技術を有する正規従業員を10名以上雇用することが必要となります。
【Trade and Investment Support Office, TISO】
TISOは関連会社へのサービス提供を主な事業目的とする外資法人向けのBOIライセンスです。TISOでは下記いずれかの事業を行なうこととされています。
- オフィス、工場の手配や賃貸を含むグループ内・関連会社へのサービスまたは管理。並びに財務センター (Treasury Center) の業務範囲外のグループ内・関連会社への貸付で、為替管理法に基づいて実施可能なもの。タイ国外の関連会社に対する外貨貸付、タイ国内の関連会社に対するバーツ貸付など。
- 事業活動に関する助言およびアドバイス。 ただし、証券取引、外国為替、会計、 法律、 広告、建築、土木エンジニアリングを除く。
- 商品調達に関する情報サービス。
- 建築、土木エンジニアリングを除く、エンジニアリングおよび技術サービスの提供。
- グループ内・関連会社で製造された、または公式メーカーに任命された機械、機器、 道具、および設備に関する以下の業務で少なくとも1つのサービスの提供。
・卸売のための輸入。
・トレーニング、サービス。
・据付、メンテナンス、補修。
・機器校正。 - タイ国内で製造された製品の卸売。
- 管理サービス、財務会計サービス、人材管理サービスなど、カスタマーサービス、データ処理など通信ネットワークを通じての国際ビジネス・ プロセス・アウトソーシングサービス。
またTISO取得のためには、上記事業の販売費および一般管理費が年間1,000万THB以上である必要があります。
【International Procurement Office, IPO】
IPOは製造業用の原材料、部品・構成品の調達を行なう外資法人向けのBOIライセンスです。
物流倉庫を構え、倉庫管理専用情報技術システムを利用し在庫管理をしていることが必要です。また商品の品質検査や梱包など適切な商品調達および管理を実施し、調達先を複数所有し少なくとも一部はタイ国内に調達先を有することが必要とされています。
販売先としては小売業は行う事ができずタイ国内の卸売またはタイ国外輸出になります。
上記に加え、IPO取得のためには払込資本金が1,000万THB以上である必要があります。