タイのVATは日本の消費税より課税対象が広範囲に渡っており、様々なシーンでVATが登場します。その中で特に忘れられがちなVATとして、タイ国外からサービスを受ける際に支払うサービス対価に課税されるVATが挙げられます。
リバースチャージ
タイ国外の企業が海外から役務提供を行い、そのサービスがタイ国内で使用される場合、その活動はタイ国内でサービス提供をしているとみなし、海外の役務提供者は7%のVATを支払わなければなりません。しかし国外の法人はタイ国内に拠点を持たないため、タイ歳入局に対して納税申告を行う事ができません。そのため国外の役務提供者に代わってサービスを受けたタイ企業がP.P 36というVAT申告書を用いて納税申告をする必要があります。
この仕組みのことをリバースチャージと呼びます。
通常はサービス対価を受け取った側がVATを徴収、納税するのに対し、リバースチャージの仕組みではサービス対価を支払った側がVATを申告、納税するため、申告漏れが発生するケースが比較的多く注意が必要です。
ではタイ国外の企業から提供されたサービスをタイで利用するとはどのような取引が該当するのか、いくつか例を挙げていきます。
- タイ企業がタイ国外の企業に対し管理・経営などのコンサルタント業務を依頼し、電話、郵便、メール、TV会議などを用いてサービスを受ける。
- ソフトウェアのライセンスの購入
- ゴルフ場、別荘、コンドミニアムなどの設計業務
- インターネット関連サービス(広告宣伝、ウェブサイトやサーバーのレンタル、インターネットサービスやプロバイダへの接続サービス利用等)
申告書と申告期限
一般的なVATであればP.P30という別の申告書を使用し、申告期限も異なるため要注意です。
P.P36とP.P30の申告(及び納税)期日は下記の通りです。なお、タイ歳入局のオンラインシステムであるe-Filingを使用すると期日が延長されます。
税務申告の種類 | e-Filingによる申告 (オンライン) |
窓口での申告 (紙ベース) |
P.P36 リバースチャージVAT申告 |
翌月15日 | 翌月7日 |
P.P30 一般的なVAT申告 |
翌月23日 | 翌月15日 |
VATの課税事業者登録を行なっている会社の場合、P.P36で支払ったVATは申告を行った月のVAT申告(P.P30)においてタイ国内取引の仕入VATと同様に売上VATから控除する事が可能です。駐在員事務所などVATの課税事業者登録を行っていない場合は費用として処理を行い、還付請求を行う事はできません。
タイ国外からサービスを受ける取引は、同時に源泉税(PND54)の対象となる可能性が高いため、タイ国外への支払いを行う際には専門家のアドバイスを事前に受ける事をお奨め致します。
申告が遅れた際の罰金については、過去の記事をご参照ください。
いかがでしたでしょうか。もしお時間が許すようでしたら、タイの税金を網羅的にまとめた次の記事も併せてご確認ください!!